Special Feature — Sculpture
SHAFT 2Artists’ Talk
4人の彫刻家が語る、素材、時間、そして「彫刻にする」ということ

2026年9月4日より四季彩舎にて開催している、4名の彫刻家によるグループ展「SHAFT 2」。
本展は、彫刻家・瀬戸優のキュレーションにより、世代や素材の異なる彫刻家を紹介する展覧会として2024年にスタートしました。第2回となる今回は、安達響、白谷琢磨、瀬戸優、山田歩の4名が参加しています。
展覧会の設営を終えた9月3日、出展作家4名によるトークを行いました。
大理石、木、テラコッタ。それぞれ異なる素材と向き合う彼らは、なぜ彫刻という表現を選び、なぜその素材を使い続けるのか。
「目に見えないものを形にすること」「素材との関係」「制作に費やされる時間」など、作品を見るだけではなかなか知ることのできない、4人の彫刻家の言葉をご紹介します。
白谷 琢磨|Takuma Shiratani
瀬戸 優|Yu Seto
山田 歩|Ayumu Yamada

目に見えないものを、
彫刻にする
皆さんの話を聞いていると、安達さんの「祈り」という言葉だったり、白谷君も作品について話す時によく使う言葉だったり、いろいろリンクしている部分がありますね。
もともと彫刻の歴史にも祈り的な部分は強くあると思うので、そこにもシンパシーを感じます。山田君も「目に見えないもの」ということを作品のテーマにしていますよね。
不可視なもの、形のないものに対して、それを彫刻にすることで感じられるものがあるんじゃないかと思っています。
宇宙のように、存在すると言われているけれど、実際には何なのかわからないもの。自分より大きくて、掴めないようなものを彫刻にする。
彫刻にするということは物質化するということなので、それを作ることで対峙できる。そのことを自分はすごく大事にしています。
目に見えないものに形を与えるとか、自分たちの内側にある思いを形にすること。それを僕は暫定的に「祈り」と呼んでいるところがあります。
目に見えないものを、なんとか見えるようにしよう、触れられるようにしようという切実な思いが、彫刻の面白いところだと思っています。
「触れる」というのは、自分と対等な存在として目の前に出現させることでもある。そこに面白さがあるから、僕は彫刻家を選んでいるんだと思います。

朴|2026

テラコッタ、玉眼、彩色|2026
彫刻の魅力とは
彫刻の魅力には、「触れられる」とか「可視化できる」ということがありますよね。
でも可視化するだけなら映像でもできる。彫刻は、それがちゃんと形になって、自分と同じ三次元の世界に存在できる。そのことが強いと思います。
僕はすごくシンプルな形が好きなんです。
例えば一本の棒を立てて、それを人に見立てるようなもの。シンプルだからこそ何にでも投影できる余白がある。でも同時に、その形そのものが実際に目の前に存在している。
今、折り紙をモチーフにしているのも、それが「見立て」の形だからというところがあります。
僕は、置いてあるだけで空気を変えるような作品が好きです。
彫刻は360度見ることができて、立体として自分と対峙できる。その存在によって、その場所の空気まで変えることができる。それが彫刻の魅力だと思っています。
僕は具象彫刻がすごく好きなんですけど、作者の痕跡が残っているものにも惹かれます。
塑造なら粘土を付けた跡だったり、木彫なら鑿の跡だったり。何百年前の作品でも、「この傷はこの作家が付けたんだ」と思うと、その人が作品と一緒に過ごした時間まで感じられる。
彫刻はものすごく時間がかかるからこそ、その時間が痕跡として残っていることも魅力だと思っています。

檜、漆、岩絵具|2026
素材とともにある時間
安達さんは、なぜ石、特に大理石を使っているんですか?
大理石は、太古の海洋生物の遺骸が蓄積して変成し、長い時間をかけてできた物質です。
それが自分の目の前にあることに、昔の生命の痕跡のようなものを感じます。
石は彫ること自体にもかなり時間がかかる。その長い「彫る時間」と、自分が物事に向き合っていくための時間がすごく合っている感覚があります。
大理石にはさまざまな色や模様があって、結晶が光る瞬間もある。その美しさも好きですね。
僕の場合は、折り紙というモチーフを、仏像彫刻の技巧になぞらえて制作するということがひとつのコンセプトです。
日本に古くからある木彫技法を使って折り紙を彫る。だから、今の作品については木彫でないと自分の中では成立しないと思っています。
ただ、モチーフが変われば、素材もまた選び直すと思います。
僕は最初、金属を使っていたんですけど、自分がしたかったのは「造形すること」なんだと気づいて、木を触ってみたらすごく楽しかった。
木は取ったり付けたりもできるし、チェーンソー、鑿、ノコギリなど使う道具によって表現も変わる。
制作している時間そのものに喜びを感じられる素材なんだと思います。
モチーフはどこから
生まれるのか
僕や瀬戸君は、モチーフが比較的はっきりしていますが、山田君や安達さんの作品はいくつかのイメージが重なっているように見えます。
その着想はどこから来るんですか?
自分ではモチーフを掛け合わせている感覚はあまりなくて、今回は「フラクタル」という考え方を使っています。
自分がもう一人いて、その先にももう一人いる、鏡写しのようなイメージです。
自分は「ないもの」を表現しようとしているので、手がかりとして使うモチーフは、逆に自分や人間の身体など、身の回りに「あるもの」なんです。
私は一貫して、目には見えない境界のようなものを彫刻として存在させたいと思っています。
その時々で自分の身に起きたことや、社会について感じたこと、自分自身の祈りのようなものがある。
そこに生物の本能や生態系を重ね、その形を借りながら表現しています。

檜、漆、岩絵具、真鍮箔|2026

大理石|2025
素材の抵抗と向き合う
Instagramから「作りたい形に至るまでの素材の抵抗感に対して、どのような気持ちで向き合っていますか」という質問が来ています。
石にはクラックが入っていたり、硬い化石や模様があったりして、不意に割れることもあります。
なので、彫りながら考えることをずっと繰り返しています。
今回の作品も、最初に想定していた形とは違うものになっています。彫っていくうちに見えてくるものがあるんです。
思い通りにならない素材に対して、それでも「形にするんだ」という意思の力を、石彫からは特に感じます。
僕は石とは対極的で、粘土をものすごく柔らかくして使います。
かなり柔らかい状態で一気に形を作って、必要なところだけ少し固める。石と粘土では、素材の硬さも制作の時間感覚も全然違う。
そういう違いも今回の展示の面白いところですね。

トラバーチン|2026
H360 × W500 × D400 mm

テラコッタ、彩色、玉眼|2026
それぞれの「軸」から
生まれる彫刻
素材も、制作方法も、作品に向き合う時間も異なる4人。
しかし対話の中で繰り返し現れたのは、目に見えないものを形として存在させること、素材と身体を通して考えること、そして時間をかけて一つの表現を積み重ねていくことでした。
「SHAFT」というタイトルには、それぞれの作家が持つ揺るがない「軸」という意味も込められています。
作品だけでなく、その背後にある作家の思考や制作の時間とともに、「SHAFT 2」をご覧いただけましたら幸いです。
SHAFT 2
白谷 琢磨|Takuma Shiratani
瀬戸 優|Yu Seto
山田 歩|Ayumu Yamada
SHIKISAISHA GALLERY
2026年9月3日
四季彩舎にて収録

